第71章 失ったのは、半生をかけて憧れ続けたポストだ

「佐伯薫。私の前でそのか弱い芝居、もういい。退屈なの」

佑奈は指先で髪をくるくると弄びながら、目の前の二人を値踏みするように見比べ、また口を開いた。

「わざわざ有川紘樹に電話させて、授賞式の最中の私を呼び戻した。狙いはそれだけでしょ」

「私が離婚協議書を気にしてるの、最初から読んでた。これで私を縛れるって思った?」

ふいに佑奈の表情が変わる。何かに思い至ったように、きらりと光る瞳が佐伯薫をまっすぐ射抜いた。口元が、わずかに持ち上がる。

「……まさか。今回の授賞式、あなたの名前が名簿になかったから?」

「それで嫉妬が爆発した、とか」

その先をあえて言い切らなくても、ここにいる誰も...

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